お正月だし めでたく行こう?突発小話
>2003年お正月にトップを飾ったへボ話です。
『紅』 1
「なに?小倶那」
「うん、ちょっと」
小さな神殿には、他には誰もいない。
祝言の堅苦しい儀式が終わり、人手はまもなく始まる宴の準備に追われていた。
それでも人目をさけるように、柱の影にその身を隠し、小倶那は振り返った。
「やっと見れた」
「小倶那?」
ふっ、と小倶那が笑った。
「たいくつだったね」
「式が?」
「そう、実はあまり式には集中出来なかったんだ」
「そうなの?」
「だって隣にこんなに綺麗な遠子がいるのに」
「えっ…?」
「よく見せて」
「・・・///」
「今日は一段と綺麗だよ。けど、式の最中も隣の妻に見惚れていたら笑われてしまう」
「あはは、そうね。よそ見できないわね」
「ずっと遠子のことが気になってしまって…。式なんてうわの空だった」
遠子は少し驚いた。そんなそぶりは見せなかったのに。
小倶那は感情を隠すのがうまい。
遠子の目に映っていたのは彼の落ち着き払った姿だった。
こんなに緊張しているのは自分だけかと、少し小倶那を恨んだりもした。
(私はきっと見るからにそわそわしていたわ)
なーんだ、と思ったら、自然に笑みがこぼれた。
「…それならわたしも、よ」
やさしく両肩を引き寄せられて、遠子は応えるように、小倶那の腕に自分の手をそっと添えた。
ふいに、楽人の笛の音が聴こえてきた。
「もう宴が始まるわ」
「うん、そろそろ行かないと怪しまれてしまうね」
「あ、怪し…。何もしてないじゃない」
「何も?」
「・・・」
いたずらっぽい瞳が笑う。
「行こう」